Background Commentary

フランスならではの結婚式、ユーモア大好きなお国柄……。
『セラヴィ!』の世界観を紐解くと、
リアルなフランスが見えてくる!

フランス式の結婚式って?

まずは、自分たちが住んでいるエリアの区役所や市役所に行き、宣誓式を行うことからスタート。敬虔なカトリックであれば、その後教会に向かい、式を挙げる。パリか地方かによっても異なるが、その後は広い庭つきの一軒家レストラン、村の歴史ある小さな城、ワインカーヴなど新郎新婦こだわりの場所で披露宴を行う。フランスの結婚式は、基本的に「新郎新婦がゲストをもてなす」というスタンス。義理立てて形式的に人を招くケースは少なく、自分たちが本当に好きな人だけを集める、というスタイルだ。
本作のように、大きな城を貸し切って披露宴を行うのは稀で、そんなところにも新郎新婦のブルジョワ意識が見え隠れする。実際の撮影は、17世紀に建てられ、ルイ13世が所有していたフォンテーヌブロー近くのクランス城で行われた。
夕方から始まる披露宴は、飲んで踊って騒いで、明け方まで続く。夜中の2、3時になってやっと「そろそろ帰ろうか」という人がチラホラ。歌や映像など、あらかじめ用意しておくのは基本的にNGで、すべてが即興でなければならない(とはいえ、サプライズ好きの新郎新婦や参加者も多く、歌などをあらかじめ練習しておくことも)。結婚式を挙げる時点で既に子どもがいるカップルも多く、祖父母が翌日まで孫の面倒を見て、新郎新婦は二人きりの時間を過ごす。
ウェディングケーキは、「ピエスモンテ」と呼ばれる小さなシュークリームが積み重なったケーキが定番。これをゲストに取り分ける。食後のコーヒーとともに供されるのは上品な小さな焼き菓子。なので、映画の冒頭でマックスが家庭的なデザートである「果物のコンポート(シロップ煮)」を提案するなんて本来ならあり得ない!

ウェディングプランナーのお仕事

日本のように結婚式場での披露宴がメインではないため、ウェディングプロデュース会社が多数存在する。基本は完全オーダーメード。披露宴の企画から事前準備、そして当日の演出までを担う。
とはいえ、そこは個人主義の国フランス。店で服を買おうとしても、ショップスタッフに「その色、あなたに似合わないわ」とはっきり言われるような国だ。ウェディングプランナーも例外ではなく、新郎新婦を必要以上に立てることなく、ズバズバ自分の意見を言う人も。マックスのようなプランナーも実際に存在するため、「自分たちでやってしまおう」と考えるカップルも少なくない。
フランス人はお金にシビア、という面もある。両親に結婚式の費用を負担して貰うのもなるべく避けたい。一日しか着ることのないウェディングドレスに大枚をはたくこともなく、自分が満足できればそれで良し。日本のようなご祝儀文化もなく、新郎新婦は事前に欲しいものを「リスト・ド・マリアージュ(結婚のためのリスト)」としてゲストに知らせ、親戚や友人たちは自分と新郎新婦の関係性を考慮しながら、身の丈にあったプレゼントを贈る。とても合理的なシステムなのだ。

“多民族国家フランス”の縮図

特に本作のように城やレストランを貸し切って行う場合は、その日だけ働ける人を集める必要がある。すべての人を正規で雇用し、税務申告などを行うことはできないため、本作に登場するサミーのように「1日100ユーロ」などの口約束で、知人を辿って人を集めることも少なくない。ただ、特に外国人労働者の場合は、不法労働をさせていることがバレると雇用主に大きなペナルティが課せられるため、「調査が入る」という情報が流れたり、本作のように怪しい人影が見えたりすると大慌て……となる。
本作のウェディングスタッフは、アフリカ系、南アジア系労働者など、国籍も豊か。実際、レストランの厨房などで働く外国人労働者は多く、これは“多民族国家フランス”の縮図とも言える。ちなみに、カメラマンのギイと行動を共にするバスチャンは、フランス語で「le stage de 3ème」と呼ばれる中学生インターン。フランスでは2005年から中学の最終学年で数日間〜1週間のインターンが義務づけられており、バスチャンにとっては恐らくこれが初めての“現場”。「Bonjour(ボンジュール)」とうまく言えず、「Monjour(モンジュール)」と思わず噛んで、ギイに注意を受けるのもそのためだ。そんなリアリティ溢れるディテールの細かさも、本作の魅力の一つ。

フランスは“言葉遊び”の国

本作を特徴づけるものの一つに、フランス人ならではの“言葉遊び”がある。実際、フランス人は言葉遊びが大好きで、日常会話のなかでも何か思いつくたびに披露しようとしてくる人も……。
たとえば、本作でサミーが口にする「ルー」という言葉は、「スズキ」と「オオカミ」のダブルミーニング。綴りも、「un loup」と変わらない。マックスが「フルートを持って来い」とサミーに指示するシーンで、マックスが指しているのは「シャンパンフルート(シャンパングラス)」。フランス語では正確には「une flûte à champagne」と言うが、「une flûte」と省略することがほとんど。結果、耳で聞く限りは同じになってしまい、サミーは楽器のフルートを探し始める。どちらも、「レストランで働いた経験がある」と言ってしまったものの、実際にはキッチン用語が何一つ分からないサミーという人物をうまく表現している。

(text by Yuko Furuya)